こんにちは、悠です。
今回は、BTS(防弾少年団…以下バンタン)の『Blue&Grey』についての感想を書こうと思います。
この曲を初めて聴いたときから、拙くてもいいから自分の言葉で感想を綴っておきたい!と感じるほど、深く深く心に残っている曲です。
聴く人によって、何万通りもの響き方をする、奥が深く、味のある楽曲だと感じています。
言語の壁を越えて会いに来てくれたこの曲が、少しでも多くの人の心に届きますように……。
音の心地よさ
アコースティックギターの優しい音色の前奏から始まり、この曲のメインPDであるテヒョンさんの、深みのある低音が響く。
穏やかなメロディーとは裏腹に、メンバーそれぞれの歌声は、苦しさや虚しさをそのまま詰め込んだようで、その調和がとても印象的。
グラミー賞にもノミネートされた『Dynamite』が、ヒットしているように、世間一般的なバンタンのイメージとしては、踊れる、テンポのはやい楽曲が評価されがちだが、こうしたバラード曲が個人的にはとても好きなので、NEWアルバムである「BE」を聴いたとき、この曲には特に強く惹かれた。
全体を通して、好みのど真ん中のメロディーラインなのだが、その中でも、特に心に残っているのは、深い森の中にいるような錯覚を起こさせる、テヒョンさんの歌声だ。
歌い出しの“Where's my angel?”だけで、一気に曲の深層を覗き込んだような感覚に襲われる。
1サビ終わりの、“I just wanna be happier”から始まるテヒョンさんのパート、歌詞を知る前に聴いたのに、思わず涙が滲んでしまうような、切実な声色で紡がれていて、歌声一つ、短いフレーズ一つに、ここまで想いが込められるんだなと、少し怖くなったほどである。
ジミンさんとテヒョンさんの声が重なる部分でも、意図せずしてふるりと身体が震えてしまった。
とても美しいのに、切なくて痛いような、そんな感覚だった。
元々、テヒョンさん自身のミックステープに収録する予定で作られていた曲だったこともあり、特に彼の想いがダイレクトに響くのだと思う。
歌詞のことは一旦置いて、音の美しさに焦点を当てて聴いてみると、個人的には、テヒョンさんとジンさんの歌声がとても好き。
二人とも、異なるアプローチで歌うタイプのボーカルであるのに、この曲を構成する音のひとつとして歌声を聴くと、どちらの声も曲によくフィットする色を持っているのが不思議だった。
柔らかいのに、芯が一本通っていて、何があっても折れない、しなやかな強さを感じさせるジンさんの歌声と、
包み込むような深さを持っていて、たとえ芯が砕けてしまっても、それをかきあつめて、また大切に積み上げていくような、そんな強さを感じさせるテヒョンさんの歌声が、
それぞれ異なるベクトルから、痛みに向き合っているように思えて、ぎゅうっと心臓の中心を掴まれたような感覚を覚えた。
また、ユンギさんのラップ大好き勢としては、今回、ユンギさんのラップがじっくり堪能出来て幸せ。
あの、言葉が零れ落ちるような、ぽつりぽつりと語るようなラップが最高に沁みる。
枠のない場所を彷徨うように、ゆるやかに流れていくラップが、あまりにも楽曲の流れに合いすぎていて、ぞっとした。
一見ラップが馴染みにくい曲調にも思えるのに、こんな風にフィット感ある低音ラップを持ってくるあたり、流石である。
低音も高音も見事に歌いこなすジョングクは、この曲でもその利点が活かされていたし、ハーモニー部分の絶妙なさじ加減がとてもよかった。
自分自身の声を本当に上手く使い分けていて、絶妙なバランスで曲に馴染んでいたと思う。
ジミンさんの特徴的な歌声は、楽曲の色とは少し雰囲気が異なっている。でも、その違いが良い。
ジミンさんならではの高音と、テヒョンさんの低音が合わさった時、2人の歌声がさらに魅力的な音色になる様子は、まるで2人の関係性を表しているようで、勝手にエモくなってしまった。
ホソクさんのラップも、普段とは異なるテイストのラップだった。
ユンギさんの部分で触れたように、音としては、語りに近いのだけれど、ユンギさんよりは枠がはっきり見えているイメージ。
そして、RMさんは前の2人に比べて、さらに輪郭がはっきりとしたラップをしていたように感じた。
彼のラップの力強さが印象的。
ユンギさんのラップ部分では“Blue”を表していて、ホソクさんとRMさんのラップ部分では“Grey”を表しているのだけれど、その違いが音の表現の違いにも表れているようだった。
上手く言葉にできないのがもどかしいのだが、
“Blue”はとても内面的な部分を見つめていて、自身が“Blue”だから、今見える世界が、過ぎる時間が“Grey”に感じる、
といった僅かな感覚の違いを、歌詞を深く知る前でも感じさせるような、ラップラインの見事な歌い分けに驚かされた。
そして何より、最後のテヒョンさんの歌声が、この曲の幕をとても美しく下ろしてくれる。
最後は、“Good night”という言葉で締めくくられるのだが、テヒョンさんの声で紡がれる英語が大好きな私にとっては、とても素敵な終わり方だった。
この部分の“Good night”の歌い方は、疲れ果てて眠りに落ちていくような、そんな印象を受けたのだが、歌詞をじっくりと理解してから聴いてみると、よりこの部分の印象が深くなるので、次の章では、歌詞について触れたいと思う。
掬い上げてくれるような言葉の数々
この曲には、自分自身が落ち込んだり、辛く苦しいときに感じる感情が、隠すことなく、そのまま真っ直ぐに表現されている。
それって実は何よりも難しいことだと感じていて。
自身の弱さや痛みをさらけ出すことは怖いし、それと向き合うことが怖いから、私はそういった感情に気がつかない振りを度々してきた。
でもテヒョンさんは、それを、こうしてさらけ出して、向き合って、その痛みごと受け止めて、こちら側に音楽として届けてくれたのである。
人間らしい脆い部分も持ち合わせているけれど、彼はとても心の根っこの部分が強く……そして、本当にあたたかい人だと実感した。
特に印象的だった歌詞をいくつか紹介していこうと思う。
“I just wanna be happier
(ただもう少しだけ幸せになりたいんだ)”
“これも大きな欲望なのかな”
この部分に内包される感情は、おそらくほとんどの人が経験したことのある痛みに通ずるのではないだろうかと思う。
“大丈夫だなんて言わないで
大丈夫じゃないから”
“大丈夫”という言葉を隠れ蓑に、自分の痛みから逃げてしまうことが多い私は、この部分ではっとさせられた。
心の底に仕舞いこんで、自分ですら気づかない振りをして、置き去りにしてきた小さな自分を、ただ掬い上げてくれるような、そんな気がした。
救ってくれた、というのとはまた違う。
あくまで、掬い上げてくれた、というニュアンスが、自分の中では一番しっくりとくる。
前の章で触れた、ジミンさんとテヒョンさんの歌声の重なり合う部分がこの歌詞なのだが、2人の歌声がすうっと入ってきて、とても印象的だった。
“遠い未来 僕が笑えるようになったら 話すね そうだったんだよって”
この部分のジンさんの歌声がとても好き。
憂鬱な気持ちに向き合って、笑える日を願う姿は、彼らだって、私たちと何ら変わりない、ただひとりの人間であるという、当たり前のことを改めて感じさせる。
“宙をさまよう言葉を そっと拾い集め
もう明け方 眠りにつくよ Good night”
明け方まで眠れずに、こうして自分の痛みと、内面とじっくり向き合って……それでも笑える日を願って、疲れ果てたように眠りにつく。
こんな日を過ごしたことがある人は、きっと私が想像している以上に多いのではないだろうか。
私自身、明日からも忙しない日常が始まるのだから、寝なくてはいけないんだとわかっていても、思考がばらばらに砕けて、どんどんと深い部分まで落ちてしまうことがある。
この曲は、今、そこで苦しんでいる人にも、過去、そこで苦しんでいた人にも、そっと寄り添ってくれるのだ。
その痛みも苦しみも、間違ったことじゃない。
そんな夜があっても、いつか、笑ってそれを話せる日がきっとやってくるはずだから。
そんな風に、“大丈夫だよ、頑張って”とは言わずに、ただ、そこにある痛みや苦しさを肯定してくれること、それを感じて眠れない夜を過ごす自分を肯定してくれることで、どれだけ心が楽になるか……本当に、この曲に出会えてよかったなと心から思う。
心の片隅に、ずっと大切に仕舞っておきたい、治療薬のような曲である。
【輸入盤】ビー:デラックス・エディション(初回生産限定盤)(ポスター他特典封入) [ BTS(防弾少年団) ]
最後に
本当に素敵な曲で、どうしても湧き上がってきた思いを書き出したくなってしまいました。
知識が乏しいため、抽象的な表現が多くなりましたが、この曲は、すべての音楽好きに聴いてほしい、そんな楽曲です。
テヒョンさんの作る曲はメロディーラインが美しいものが多く、歌詞を知らなくても涙が出るような、そんなイメージがあるのですが、今回も例に漏れず……どうしてこんなに美しいメロディーラインが書けるんだろうか……と毎回、本人の心根の美しさに驚愕しています。
(『Sweet Night』の甘やかなメロディーはもちろん、個人的には『Winter Bare』のあのあたたかいメロディーが大好きなので、またのんびり、それらの曲についても書きたいなと思っています。ちなみに、『風景』も遅ればせながら、最近知って、メロディーの美しさに震えました…。恐るべしキム・テヒョン氏……。)
音楽における評価は、あくまで指標のひとつとしか捉えていませんが、どうやら『Blue&Grey』は、世界中から高い評価を受けているようで……良い音楽がきちんと良い評価を受けているのは、なんだかとても嬉しいです。
長くなりましたが、最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
では、また。