悠悠自適なオタク生活

好きなことやどうでもいいことを書き綴る、ジャンル崩壊の趣味ブログ。

「フレデリズム3」の話

こんにちは、悠です。

今回は「フレデリズム3」について、がっつり感想綴ります。

フレデリズム3 (初回限定盤 CD+DVD) [ フレデリック ]

名盤です。最高です。
フレデリック大好きです。


『ジャンキー』で始まり、『名悪役』で終わる。

まるで一本の映画を観ているような感覚になるアルバムでした。

(がっつりアルバムのネタバレを含みますので、ご注意ください!)

1.「ジャンキー」

キャッチーでパンチがあるイントロが魅力的。

“飽き飽きです”

繰り返されるフレーズが頭に残って離れないのは、流石フレデリックである。

“承認欲求は 飽き飽きです”

“劣等感に 飽き飽きです”

“品行方正は 飽き飽きです”

このあたりのフレーズが、かなりぐさっときた。

現代の人々がぶち当たっている生き辛さ悩みに対して、軽快なサウンドに乗せた、鋭い言葉で切り込んでくる。

“着飾った愛を語ってたって 息詰まってジャンキー”

“着飾った愛も答えがあって それはそれでジャンキー”

“したがってもっと夢中になって 奉ってチャンキー”

“もう短命で単調なジャンキーは結構です”

さらに印象的だったのは、“ジャンキー”“チャンキー”の使い分け。

康司さんはやはり言葉遊びのプロだ。

異なる意味を持つけれど、音の響きが似ている2つの言葉を巧みに操って、中毒性のあるフレーズを生み出している。

“ジャンキー”という単語は、“中毒者”の意味を持つ。

タイトルにこの言葉を持ってくるのも面白いし、歌詞の中で、様々な言葉と合わさって、ふんだんに使われているのも興味深い。

“時代じゃない 自分次第だって なぁ”

この“自分次第だって なぁ”の部分が個人的には好き。

“もう短命で単調なジャンキーは置いといて 永久に厄介なジャンキーで結構です”

ややこやしくて、“ジャンキー”ゲシュタルト崩壊が起きそうだが、この複雑さがより一層良い。


歌詞とメロディーが頭の中をぐるぐるとして、何度でも聴きたくなる一曲。

タイトル通り、中毒者を生むフレデリズム全開の楽曲である。

MVのダンサーが格好良いし、うさぎちゃんが可愛いのがおすすめポイント。


2.「YONA YONA DANCE」(フレデリズム Ver.)

和田アキ子さんに楽曲提供し、TikTokで話題になった楽曲のセルフカバー

テンポとキーがフレデリック仕様に変更されており、楽曲の雰囲気も変わっているのが印象的。

フレデリックらしさ全開のダンスミュージックなので、しっくりくるというか、“王道のフレデリック感がある。

踊らせる楽曲の名手であるフレデリックの、新たな王道ダンスナンバー

最近のリリースでは、『LIGHT』『Wake Me Up』など、同じダンスミュージックでも、タイプの異なる曲が多い。

それらのちょっとお洒落で小粋なサウンドは、フレデリックの新たな扉を開いた感じがして、個人的にはとても好きなのだが、やはりこういう系統のダンスナンバーも巧い。

今回の『YONA YONA DANCE』は、『オドループ』『スキライズム』といった楽曲に近いイメージがあって、フェスでの光景が思い浮かんだ。

“踊らにゃ損です”

難解な歌詞を、スムーズに噛まずに歌えるのは健司さんしかおらんな…などと思うなどした。

 

3.「熱帯夜」

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“けったいな 熱帯夜”

“厄介で 焦れったいや”

初めて聴いたときから、このフレーズが脳内でリピートされている。

イントロドン並みの速さで、これは絶対熱帯夜…!とわかってしまうの、とても凄い。

それだけ一曲ごとに個性があるということで、康司さんの引き出しの多さに驚かされた。

歌詞が個性的で面白かったので、いくつか気になったフレーズを紹介したいと思う。

“あぁ厄介や 火花散りゆく一昼夜”

”厄介や““一昼夜”といった単語を使うことで、個人的にはどことなく古風なイメージを抱いた。

サウンドとの歌詞のバランスが非常に良くて、妖艶な雰囲気になるのが不思議。

“飛び交う 正解や不正解ばかりのCO2”

かと思えば、ここでは“CO2”という表現を使って、冒頭との落差を作り出してくる。

言葉の操り方が非常に巧み。

“パーテーション越しの討論会”

“画面越しの愛だけじゃ いけすかないのは誰のせいだ”

ここで、今の社会の様子に切り込んでくるフレーズが登場することで、一気に曲が身近に感じられる。  

“パーテーション”“画面越し”といった言葉は、コロナ禍になってからよく聞くようになった。

私達が今生きている世界の延長線上に、曲の世界が広がっていることを示すフレーズが印象的だった。

“あぁ殺生な 画角麻痺して一張羅”

個人的には、“殺生な”という表現を使っている点に興味を惹かれてしまう。

また、“画角麻痺して一張羅”の部分も言葉の響きが心地良くて、聴き入ってしまった。

“ちゃんちゃらおかしいや 過剰摂取して幻想郷”

“ちゃんちゃらおかしいや”のフレーズも、音のリズムと流れが面白くて、これを歌詞に取り入れる手腕に驚かされた。

康司さん、恐るべし。

“上っ面の愛だけじゃ シラけちまうのは誰のせいだ”

“澄ました痛みと熱帯夜 荒くれたいや”

趣深く面白みのあるフレーズがたくさんあって、聴けば聴くほど歌詞に惹かれる。

今回のアルバムはタイアップ曲が多いが、ノンタイアップの楽曲の方が、歌詞の言葉遊び具合が激しい気がする。

ゴロを合わせたり韻を踏んでいたり、聴いていて面白い。

健司さんの“荒くれたいや”の歌い方が好き。

『熱帯夜』、いとをかし。


4.「VISION

ここでVISIONを持ってくるとは…にくい演出である。

フレデリックは、この3年間たくさんの新曲をリリースしているので、VISIONには懐かしささえ覚えるが、イントロがかかった瞬間の安心感が凄まじくて、あぁ…私の好きなVISIONがここに…と感慨深くなった。

“さよなら 古びたプライドは捨てて”

初めて聴いたときから、ずっと印象的だったのが、このワンフレーズである。

これまでのフレデリックとは一味違った、シーンを切り替えるようなサウンドが印象的なこの曲で、“古びたプライドは捨てて”と歌う彼らの姿勢に刺激を受けた。

“肥大した未来 遮ってしまったVISION

“自分次第 この目で この手で生み出して”

彼らが歌う“自分次第”という言葉には、背中を押してくれるようなパワーがある。

“ずっと足掻いた 不器用でも希望の世界を”

“見極めるんだ 今はただ”

“これから映りこむ その全ては”

“君の世界だ 問いただして”

個人的には、2番のサビが気に入っている。

“不器用でも希望の世界を”というフレーズが、自分にとてもリンクしていて、聴くたびに勇気を貰える一曲。


5.「ラベンダ」

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タイトルを見たときからずっと気になっていた楽曲。

サウンドが面白くて、それに合わせた健司さんの歌い方も好き。

アルバムの中でも毛色の違ったタイプの曲なので、ここに『ラベンダ』が入ることで、アルバムの表情ががらりと変化するのが面白い。

ベランダのラベンダーの話を思い出しながら聴いていたが、想像していたよりもずっと“夜”の色が濃くて、なんだか不思議な感覚になった。

ゆらり ゆらり

“風に乗せて 揺れられてく夜の花”

ゆらり ゆらり

“揺れるたびに 染み付いてく夜の花”

“夜の花”という表現も好き。

夜のベランダで、風に揺れるラベンダーの様子が目に浮かぶようだった。

“奇奇怪怪な世界 我々人類は”

“夜の残像を仄めかしてしまった”

個人的には、このフレーズが気に入っている。

“残像”を“仄めかしてしまった”という表現が、どことなく仄暗い雰囲気を感じさせていて、味があって良い。

“ほろり ほろり”

“淡い香り 寄り添ってく夜の花”

“ほろり ほろり”

“触れるたびに 染み付いてく夜の花”

ゆらり“ほろり”という言葉の響きが美しい。

この部分のサウンドも心地良くて好き。
つい口ずさみたくなる。


最後、“ラベンダー”“カレンダー”がかかっているのも耳に残る。

繰り返しのフレーズが頭から離れない、ちょっとディープな一曲。


6.「サイカ

個人的にこのアルバムの中でも特に好きな曲。

どの曲も良いので正直選びきれないが、『サイカに関しては歌詞がとても好きで、何度も読んで、何度も見返して、何度も聴いた。

「才能の華」と書いて『サイカ

“あなたから見えるその景色と”

“私から見えるこの景色が”

“混じり合うことで輝いてく”

“暗闇の扉を貫いた”

あなた”と“それぞれから見えている景色があって、それらが混じり合うことで輝いていくという表現が印象的。

信頼という、目に見えない繋がりをこうして表現するのか、と驚いた。

“あなた”と“私”の物語のような歌詞に心を掴まれる。

“想いを止める術はないよと”

“願いや運命(さだめ)を掴んだのさ”

個人的にはこのフレーズが好きで、“掴んだのさ”という表現に意思を感じて気に入っている。

“だから燦々と夜が明けたら”

何度も繰り返される“燦々と”という言葉が、サウンドにぴったりと合っていて心地良い。

ゆったりと音に身を任せるような、揺蕩うようなサウンドが胸に沁みる。

“あなたから見えるその光と”

“私から見えるこの光が”

“翳りゆく日々を照らすことで”

“鮮やかな華が芽吹き出した”

どこか懐かしいようなサウンドと、絶妙なリズムに惹かれずにはいられない。

“翳りゆく日々”“鮮やかな華”との対比が好き。

“簡単に傷つけ合って”

“単純に思われたって”

“鮮明な心で夜をふかしてく”

“純粋なあなたにとって”

“繊細なあなたにとって”

“果てしない正夢を描いて”

“正夢を描いて”という表現も独特で、印象に残っている。

この部分はメロディーの流れも好き。

初めて聴いたときは、サビに向かって盛り上がっていくサウンドと、心地良い響きの歌詞に引き込まれた。

康司さんの紡ぐ言葉や歌詞の面白みには、毎回驚かされるが、今回も心地良い響きに溢れていて、聴いていてとても勉強になった。

私自身、ものを書くのが好きなので、歌詞の組み立て方言葉の選び方に興味があるのだが、康司さんの書く歌詞は本当に面白くて、毎回新鮮な発見と驚きがあるのだ。

サウンドの良さはもちろん、康司さんの言葉のチョイスに心が震えた一曲。

(TVアニメ「さんかく窓の外側は夜」OPテーマ)


7.「ANSWER」(フレデリック×須田景凪)

フレデリック×須田景凪のコラボソング。

コラボということもあって、歌詞が普段のフレデリックとは一味違うのも面白い。

健司さんの声と須田くんの声との掛け合いも新鮮で、疾走感のあるサウンドが癖になる。

“一体今は何時何分何秒?”

繰り返し登場するこのフレーズが印象的だった。

早口言葉のような言葉の応酬が凄い。

“思い出して 思い出して”

“それが一体全体 なんだってことですらもう”

“わかんないや わかんなくなってさ 気づきたくないよ”

“重なっていく毎日に 傷ついてでもぶつかってでも”

“過ぎる日々が愛おしいのは”

“譲れないものがあるから 正解を探して”

畳みかけるようなラストのサビが格好良い。

ライブではフレデリックバージョンを聴いたが、康司さんのコーラスで聴くと、曲の雰囲気がもう少し柔らかくなって、その違いも面白かった。

(「テイルズオブルミナリア」インスパイアソング)


8.「サーチライトランナー」

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“サーチライトランナー ずっと前を向いて”

“掴んでエースナンバー”

疾走感溢れるサウンド前向きな歌詞真っ直ぐで気持ちを掻き立てられるような爽やかな曲。

歌詞で繰り返し歌われる通り、思わず走り出したくなるような爽快さがある。

“走って 走って 走って”

“振り切ってしまっては颯爽”

“走って 走って 走って”

“すり切ってしまっては上昇”

テンポが速く、音が駆け抜けるような感覚があるので、聴きながら、音につられて気持ちも前のめりになってしまう。

言葉の遊び方韻の踏み方は、流石フレデリックと言わんばかりの楽しさなので、爽やかな青春ソングのようでいて、どこか独特な世界観がある

“十人十色の覚悟が心を突き動かした”

このフレーズが個人的には気に入っている。

“十人十色”という単語があることで、それこそチームの絆が連想されて、楽曲のイメージが広がった。

みんなで歌える部分もあるので、早くライブでも大きな声で歌いたい。

Jリーグ×アオアシ「グローイングアッププロジェクト」KICKOFFムービータイアップ)


9.「Wake Me Up」

つい踊りたくなるサウンドに、無機質に歌われる“Wake Me Up”のフレーズが頭から離れなくなる中毒性の高い一曲。


曲を聴くたびにMVのダンサーが脳内で踊り出すくらいに、初めてMVを見たときのインパクトが強かった。

サビのリズムがとても面白くて気に入っている。

“一切合切全部掻き出してしまって”

“つまらん御託ばかり つらつらと 並べられても”

“この日常が見えますか”

“なので 一切合切全部吐き出してしまって”

“つまらん欲にまみれ フラフラと 踊らされても”

“目に映るのは一等星”

ここで“一等星”という言葉が登場するのが個人的にはとても好き。


10.「Wanderlust

気球飛行機に乗って、世界中を飛び回りたくなるような、壮大で軽やかな楽曲。

ライブで聴いてドハマリした。

“鮮やかなイマジネーション” 

“鮮やかなスローモーション”

同じ修飾語が意味の異なる2つの言葉につくことで、それぞれの意味が際立っているのが良い。

“鮮やかな”という言葉に“スローモーション”という単語を組み合わせてくるとは……新鮮で驚いた。

“飛び回れ感情を”

“さすらえ未体験を”

この2つのフレーズと軽快なサウンドが相まって、旅をしたいという気持ちが湧き上がってくる。

雨粒を思わせるような音色や、風を思わせるような音色がふんだんに使われていて、聴いていて気持ちが良い。

ニュージーランド政府観光局「ニュージーランドの旅を想像しよう」キャンペーン動画テーマ)
 

 

11.「YOU RAY」

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康司さんボーカルの楽曲。

後ろで鳴っている木琴マリンバの音が、まるで童謡を思い起こさせるような、なんだか不思議な感覚になる。

(木琴かと思っていたら、マリンバでした…。言われてみれば、木琴にしては音が柔らかいような…。勉強になりました!)

FCライブで聴いたアコースティックバージョンは、どこか仄暗いイメージだったが、こちらはもう少しセピア色に近いイメージだった。 

“外で飲む炭酸が胸に染みてく前に”

“ポツリ雨降る音が意味を鳴らし始めた”

ここで登場する“炭酸”が、楽曲の情景のイメージにぴったりで、炭酸の泡と雨の音の情景が脳内に浮かぶ。

響く木琴マリンバの音によって、どこか知らない場所に誘われていくようで心地良い。

“傷つかぬ繊細”

“紛らわす新鮮”

 
この2つのフレーズも良い。

“繊細”という単語と、“新鮮”という単語をそれぞれ修飾するのが、傷つかぬ紛らわすであることの不思議さ……。

何度も聴いて、何度も歌詞を読み返したくなる深みがある。

“夕陽に沿って揺らめくあなたは”

“まるで幽霊みたいに透明”

“消えそうなほどの声で囁いた”

“触れることすらできない僕 ただ単細胞”

“枯れそうなほどの声で笑えたら”

“想うことしかできない僕 ただ何回も”

サビの歌詞が本当に良い。

“夕陽に沿って揺らめくあなた”というフレーズが特に好きで、メロディーの美しさと、木琴マリンバやストリングスの繊細な音色に身体が震えた。

特にヘッドホンで聴くと、曲の世界に入り込んでしまったような感覚になって、ずっと鳥肌が立ちっぱなしだった。

凄い曲である。

“0になってから わかった気がした”

“0になってから 笑った気がした”

最後のフレーズを歌うとき、おそらく康司さんは本当に微笑んでいたんだろうなとわかる歌い方をしていて、ぞわりとした。

ディープなフレデリックの魅力が堪能できる一曲。


12.「蜃気楼」

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イントロから、カードが飛び交うバトルの画が浮かぶような、激しいサウンドが印象的。

一度聴いたら忘れられないイントロと、しゅっとして洗練された健司さんの歌い方が良い。

曲によってここまで歌い方や表現を変えてくる健司さんには、毎回感動する。

“まるで蜃気楼 手を伸ばして蜃気楼”

“それでも蜃気楼 銀河よりも遠くへ”

“もっと遠くへ 歩み寄って蜃気楼”

個人的には、“銀河よりも遠くへ”というフレーズが、サウンドとフィットしていて気に入っている。

タイアップアニメのイメージにぴったりで、アニメの映像と共に聴きたくなった。

(TVアニメ「遊☆戯☆王ゴーラッシュ!!」OPテーマ)


13.「TOMOSHI BEAT」

ライブで聴いて好きになった曲で、このライブ映像も何度も観た。

今回のアルバムは特にライブで化ける曲が多い印象がある。

“朝日も嫉妬するほどに”

“刻め 最高の夜明けを 残像消して”

ツアータイトルにも使われていた“朝日も嫉妬するほどに”というフレーズが印象に残っている。

擬人化の手法だが、“嫉妬”という表現を使うあたり、私の大好きなフレデリックの歌詞だ……と、そのセンスに敬服した。

“太陽の代わりを演じ切ってくれ”

また、このフレーズも気に入っている。

“演じ切ってくれ”という歌詞で、思わず『名悪役』が浮かんだ。

やはり康司さんは、頭から離れない印象的なフレーズを作るのが巧い。

“夜空も笑っちまうほどに”

“灯せ 生命の光を 葛藤消して”

朝日の嫉妬と対比して、“夜空も笑っちまうほどに”という表現を持ってくるのはズルい。

格好良すぎる。

対比表現の巧みさには、本当に驚かされるし、口語っぽい表現は覚えやすく、一度聴いたら癖になる。

歌詞の表現が本当に面白くて興味深い。


(「テイルズオブルミナリア」OPテーマ)


14.「名悪役」

“思い出にされるくらいなら 二度とあなたに歌わないよ”

強烈な印象を残す冒頭のフレーズから、疾走感溢れるサウンドが駆け巡る。

フレデリックの楽曲の中でもかなりBPMが速いが、ただ速くてノリが良いだけではない奥深さと、めまぐるしい変化があるのが、この曲の魅力である。


まず、AメロとBメロ、そしてサビで、リズムが緩急をつけながら変容していく

さらに面白いのが、サビの最後のフレーズである、“思い出にされるくらいなら 二度とあなたに歌わないよ”の部分で、またリズムアプローチが変わるという点である。

歌詞とリンクして、リズムやサウンドが表情を変える様に衝撃を受けた。

まるで曲自体が“演者”のようだ。

“何かと素っ頓狂で 頓珍漢な名演技であったんだ”

この部分、“名演技”という言葉に対して、“素っ頓狂”“頓珍漢”といった、ネガティブな意味合いとも受け取れる言葉が飾られているのが興味深い。

フレデリックの歌詞には、こうした表現が多く、何度聴き返しても、読み返しても、素通りできない面白みがあるのが好き。

“このまま僕は 曖昧な最終回なんて過ごしたくはないよ”

“「色褪せはしない今が綺麗だった」って”

“思い出にされるくらいなら 二度とあなたに歌わないよ”

タイトルの『名悪役』という言葉のインパクトの強さはもちろん、歌詞の中に込められたメッセージはとても深く鋭い

“善”“悪”という相反するふたつの概念はあれど、明確な線引きなんて誰にもわからない。


そもそも、誰かのために悪役を演じることは“悪”なのか、それとも、“愛”なのか。


悪役の想い正義は果たしてどこにあるのか。


それらの裏側にある、普通なら語られないような部分に焦点を当てているような歌詞が印象的。


“思い出にされるくらいなら 二度とあなたに歌わないよ”という強烈なフレーズの真意は何か。

そこに込められた想いは?

それを、こちら側にいるリスナーそれぞれの解釈に委ねるあたりに、フレデリックとリスナーの間にある信頼関係が感じられて嬉しかった。

“あれから君は 後悔や劣等感さえも正解に変えて”

“もっと強くなったかな 私の知らない毎日で”

“私の知らない毎日で”と結ばれているあたりが、フレデリックらしくて気に入っている。

“これから僕は 後悔や劣等感さえも正解に変えて”

“「色褪せはしない今が綺麗だった」って”

“思い出にされるくらいなら”

“思い出を超えるくらいにさ”

“絶え間ない今を歌うから 二度とあなたを忘れないよ”

これまでのフレデリックの楽曲でも、言葉の表面上の意味だけでなく、康司さんが一度咀嚼してから改めて、その言葉の側面の意味を掬い取っているのかなという印象を度々受けていたのだが。

今回はそれが特に顕著に歌詞に表れている気がする。

“正義”“悪”については、『正偽』などでも歌われてきた。

それを『名悪役』では、物語のように歌詞で紡いでいるのが印象的。

悪役の持つ正義や愛に焦点を当てた、一種のダークヒーロー的な楽曲で、このアルバムの中で個人的に最も好きな曲となった。

“演じてやったんだ すべてを演じてやったんだ”

“まだ見ぬノンフィクションを脳に浮かべて その台本を置いた”

アルバムの最後の最後のフレーズが、“その台本を置いた”で終わることに感動してしまって、聴き終わった直後は、ぶわっと感情の波が押し寄せてきた。


『ジャンキー』で始まり、『名悪役』で終わる。


恐ろしく素晴らしいアルバムに出会ってしまって、しばらく余韻から抜け出せそうにない。


最後に

最高を更新するだけでなく、フレデリックの新たな未来を感じられる名盤でした。

これはヤバいです。

アルバムを聴き終えたあとの興奮が全くおさまりません……。

どの曲も良すぎて、ベストが決められませんが、強いて言うなら、私は『名悪役』『サイカを推します。

いやでも、『熱帯夜』『ラベンダ』も推したい……。やっぱり選べそうにありません。


とにかく最高です。ぜひ聴いてみてください……!!


(最後に初回限定盤DVDについても少しだけ。フレデリック初の武道館ライブの映像が収録されているのですが、最高に格好良い音鳴らしてます。康司さんボーカルの『もう帰る汽船』や、『ふしだらフラミンゴ』からの『他所のピラニア』の圧巻の映像演出、FAB!!の魅力が炸裂した『うわさのケムリの女の子』、フェスで聴いて以来個人的に大好きなナンバーまちがいさがしの国』など、見どころ満載です。『オンリーワンダー』で紙吹雪が舞ったときは、神戸ワールド記念ホールでのライブを思い出して、画面のこちら側で泣きました。そして、Wアンコで歌われた『名悪役』で無事に射抜かれました。この映像を観て、私はフレデリックの音楽が大好きなんだなと改めて実感しました。)

思っていた以上に書きたいことが溢れてしまって、超大作になってしまいましたが、最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

では、また。