こんにちは、悠です。
今回は、現在明治座にて上演中の『本日も休診』に出演されている、我が永遠の王妃様、花總まりさんについて。
なんせ4歳からずっと花總さんのファンなので、その想いは深く重いです。
今年の『MA』の大楽を迎えた頃、花總さんのインスタグラムの投稿に、コメントさせて頂いたのですが……なんと、ご本人がいいね!してくださいました。
その日は震える手で母に報告して、ともに祝杯をあげました。
私のオタク人生の始まり。
初めてファンになったスター。
それが、私にとっての花總さんです。
初めて自分で便箋を買って、初めてファンレターを書いたのも、花總さんでした。
祖父母の在宅介護のため、自由に観劇ができなくなった今、オンライン配信でもなければ花總さんの舞台のお姿を拝見することができません。
しんどい。かなしい。さみしいです。
というわけで、宝塚時代の舞台の円盤やら退団後の作品の円盤やらを引っ張り出してきて、少しずつ大切に見ています。
今回は、初めて観たとき、その美しさに衝撃を受けた『鳳凰伝』について。
お暇な方はぜひ、覗いていってください。
作品について
今回紹介するのは、花總さん演じるトゥーランドットの、泣く子も黙る絶対零度の美貌が印象的な『鳳凰伝』。
その美しさと、美しさ故の恐ろしさに、当時劇場で観たときには、思わず息を呑んでしまった。
鳳凰伝−カラフとトゥーランドット−(’02年宙組・東京)【動画配信】
作品自体は、プッチーニの有名なオペラ『トゥーランドット』をベースに、見やすいように少し柔和されて描かれている。
宝塚歌劇ならではの華やかで美しい衣装が印象的。
簡単なあらすじ
国同士の争いが絶えない時代、異国の王子カラフ(和央ようかさん)は、国を失い、父親であるティムール王の行方を追って、北京にやってくる。
すべては“されど夢なのだ”と歌っていたカラフだが、北京で、皇帝の娘であるトゥーランドット(花總まりさん)の美しさを一目見て、「彼女を自分のものにしたい」と思うのであった。
北京では、トゥーランドットが、求婚してくる異国の王子たちに3つの謎を出し、その謎が解けなければ首をはねるという謎解きが評判になっていた。今までにその謎を解いたものはいない。
謎に挑戦するカラフ。
初めての感情に動揺するトゥーランドット。
本当の愛とは何か、トゥーランドットの選択は……。
作品を改めて観て、当時とは違った印象を受けた。
皇帝の“娘”であるから、彼女が“女”であるから。
必死に国を守らんとしてきたことも、結局は無駄になってしまう。
トゥーランドットの心の葛藤が、当時よりもさらにダイレクトに刺さって、ここまでメッセージ性を秘めた作品だったのか、と驚いた。
冷酷で美しいトゥーランドット
稀代の悪女。
氷の女帝。
その美しさは世を傾ける。
花總さんのトゥーランドットは、まさしく私のイメージ通りの、冷たく、美しく、冷酷で、残酷なトゥーランドット様だった。
登場した瞬間に、劇場中が彼女の美しさにのみ込まれてしまうような感覚。
「聞け、北京の民よ。」
この歌い出しのインパクト。
何度聴いても、鳥肌が立つし、何度観ても見惚れてしまう。
長い裾をものともせず、歌いながら優雅に階段を下り、銀橋を渡り切る美しい姿に、今回も痺れるような感覚だった。
メイクも普段とは異なり、かなりキツめな印象を受けた。
登場シーンの、トゥーランドットの氷のような表情が、ストーリーが進むにつれて、どんどんと溶かされていく様を見事に演じる花總さんが素晴らしい。
今回もやはり心奪われてしまった。
登場シーンのトゥーランドットは、異国の王子たち、男たちへの憎しみを内包しているような、静かな怒りを秘めた表情をしている。
かつて行われた王女への残酷な仕打ちの復讐を、と歌う様子に、当時の歴史を改めて反芻すると胸が痛くなる。
トゥーランドットがやっていることは、とても残酷で許されざる行為だが、そこに至るまでの彼女の心の痛みや苦しさを、花總さんの演技が丁寧に描き出していて、思わず彼女の心情に引っ張られてしまった。
冷たく微笑む姿はもちろん、『鳳凰伝』といえば、カラフの幻影に掻き乱されるトゥーランドットの姿も印象に残っている。
真っ赤な衣装に身を包んで、「熱い……」と溢すトゥーランドットの壮絶な色気にぞっとした。
艷やかな美しさを放っているのに、決して品格を失わない。
圧巻である。
また、カラフに謎を出し、その答えを待っている間のトゥーランドットにも、見惚れてしまうこと間違いなしだ。
余裕のある表情で、愉快そうに笑いながら舞う姿から、謎が解かれていくにつれて、だんだんと表情が変わっていく。
その見事な変遷っぷりに、トゥーランドットの表情から目が離せない。
- ここから先は結末のネタバレを含みますので、未視聴の方はご注意ください。
ラスト、カラフの名を知っている元奴隷のタマル(彩乃かなみさん)が、鞭で打たれながらも決して彼の名を口にしなかった姿を見て、本当の愛とは何かを苦悩の末に悟ったトゥーランドット。
この場面は、彼女の困惑、苦悩すべての感情が、花總さんの張り詰めた演技から伝わってくる。
タマル役の彩乃かなみさんの好演も相まって、涙が止まらなかった。
最後、「死ではない決して」、「芽生えた命を」、「惜しむべき命を」と、繰り返し“命”という言葉が使われている。
国同士の争いで奪われた数多の命、トゥーランドットが奪ってきた罪なき命。
(この中に含まれるタマルの死が、トゥーランドットに大きな気づきをもたらしたように感じました。彩乃かなみさんのタマルも大好きです。)
それらすべてを弔い、争いのない新たな世界を目指して歩み出す、そんなメッセージが込められていて、初見のときよりも、作品全体としての印象がとても変化した。
そのおかげか、花總さんが丁寧に演じているトゥーランドットの感情の機微も、以前よりさらに感じ取れるようになった気がする。
年齢を重ねたからこそわかる良さを、改めて実感できてよかった。
宙組の魅力
少し余談になるが、タカハナ時代の宙組の作品は、ありがたいことに、母に連れられてほぼすべて宝塚大劇場で観劇しているので、劇場で体感する楽しさはここから知った。
今振り返ってみても、当時の宙組のダイナミックなパワーというのは、凄まじかったように思う。
身長の高い組子さんが多く、お芝居でも、ショーでも、若くてエネルギッシュなパワーに溢れていたイメージがあり、格好良いなぁといつも憧れていた。
『鳳凰伝』でも、首斬り役人を演じる寿つかささんや、タマル役の彩乃かなみさん、バラク役の水夏希さんなど、それぞれがしっかりと爪痕を残していたのが印象的。
他にも好きな作品がいくつもあるので、また我が家の円盤を見返してみたい。
最後に
今回は、花總さんの出演された『鳳凰伝』について綴ってみました。
重たそうな鬘と髪飾り、動きづらそうな衣装でも、それを感じさせない花總さんの立ち振る舞いに毎回惚れ惚れしてしまいます。
トゥーランドットは、やりようによっては、冷たい悪女、我儘な人という印象のままで終わってしまう難しい役どころだと思います。
そんな彼女が抱えていた、ひとりの人間としての苦悩や心の揺れ、葛藤を丁寧に紡いで、トゥーランドットという役に息を吹きこんだ花總さんの演技には、今回も心震えました。
演じている役柄が花總さんに憑依しているんだろうなと、観るたびに感じます。
本当に凄い方だなぁと。
やっぱり観れば観るほど、花總さんが舞台に立っているこの時代に生きていることに感謝したくなるほど、彼女のお芝居が大好きです。
これからも花總さんの素敵なお芝居がたくさん観られますように。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
では、また。